もしグロ 〜もし管理栄養士の女性社員がヘルスケアアプリの「グロースハック」をしたら〜

これは管理栄養士からグロースハッカーに転身したとある女性社員の奮闘記である

第1話 管理栄養士グロースハッカーたんたん爆誕

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大切な前置き

このお話はフィクションです。実在の人物や団体、事件などとは一切関係ありません。

突然の転機

 都内のF社に務める管理栄養士であるたんたんは、今日も管理栄養士としての職務に精を出していた。

 F社はヘルスケア領域で事業を展開するベンチャー企業である。もともとはオンラインでのダイエット指導からスタートしたF社は、オンラインでの実績を生かしてFUという名前のヘルスケアアプリの開発を行っている。

 FUはヘルスケアの情報を紹介する情報アプリであるとともに、日々の自身の体重の変化や食事などを管理できるレコードアプリでもあるという非常に便利なアプリで、F社の成長の大きな要因の1つである。

 さらにフィットネスジムの運営なども事業に加え、ヘルスケア事業の全般を行う企業としてここ最近で成長をしてきた。

 たんたんはそのF社の立ち上げ初期の頃から続いているダイエット指導に従事する管理栄養士の1人であった。人々を健康にしたいというF社の理念に共感していたし、その仕事内容に不満はなかった。今後もしばらくはそうして生きていくのだと漠然と考えていた。

 そんな彼女に突然転機が訪れた。

 その日彼女が出社すると、上司に呼び出された。ミーティングルームに行くと、上司はおもむろに彼女に異動を告げたのだ。

上司「うちでやっているヘルスケアアプリFUのことはもちろん知っていると思うんだけど、そこの事業部の担当者から、たんたんを是非チームに招きたいという連絡を受けたのだ。
 気が進まなければ断っても構わないし、行ったあとにやっぱり戻るというのも可能ということで聞いている。
 たんたん自身の経験を増やすという意味でも、面白い話だと思うのだが、どうだろう。」

 そのチームというのは、FUのユーザーをさらに増やしていくべくグロースハックを行っているチームであるということだった。

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(グロースハックってなんだろう。。。)

 馴染みのない業務内容に一瞬戸惑ったが、こういうときに面白いと思ってしまうのがたんたんの昔からの性格だった。何より、自分が求められているのであれば、まずはそれに応えたいと考えた。

 会社の規模が大きくなっているとはいえ、FUのユーザーの増加を考えればもっともっと人員が必要になっているのだろう。

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(人員が足りない部署は、血液中の鉄分が足りていない鉄欠乏性貧血と同じ状態だわ。だったら行って健康にしなきゃ。だって私、管理栄養士だもの。)

 このように、何かを人体や栄養のように考えるのがたんたんの人とは変わった癖であった。

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「わかりました。行ってみます!!」

 こうして、管理栄養士からグロースハッカーという華麗なる転身が始まったのであった。

そしてグロースハッカー

 担当していた顧客の引き継ぎが終わり、いよいよ異動の日になった。グロースハックチームの席に向かうと、チームリーダーである祐天寺と、以後彼女のメンターとなる依田が彼女を迎えた。

 グロースハックチームのリーダー、祐天寺豊。名字と名前が「ゆ」で始まることから、社内では「ゆーつー」とか、そこからなまって「ゆっつー」と呼ばれている。

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「ようこそグロースチームへ。今回の異動の話、受けてくれてありがとうございます。」

 たんたんが所属することになるグロースハックチームはデータ分析グループというグループの中の1つのチームである。ゆっつーはそのグループのリーダーでもある。
 彼はデータ分析グループのリーダーとして、データを元に経営陣と直接やり取りして会社の方針を決めるのに関わっていたりもする。今日も頭に不思議な寝癖をつけており華々しい印象はないが、社内において非常に重要な人物であることは間違いない。

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(まさに会社を支える大事な大黒柱。人体の柱となるカルシウムみたいな人ね。)

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「さっそくだけど、しばらくはよりーにいろいろ聞きながらグロースハックの基礎を学んでもらって、だんだん業務に入っていってください。」

 よりーこと依田吉行。彼はグロースハックもしつつアプリの開発自体も自分で行うという、いわゆるフルスタックな人物である。社歴が長く活躍しているため、たんたんも全社会議などで話をしているのを何度か目にしていた。知識と能力が幅広いので、なにかあると頼られている存在というイメージだ。

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(問題が起きたとき、もっと改善したいとき、困ったら頼りたくなる存在の彼は、調子がわるいときや調子を整えたいとき、まずはとりいれる栄養素とおなじ。F社におけるビタミンCというわけね。)

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「依田です。よりーと呼んでください。これからよろしくね。」

その日は導入ということで、アプリの現状の話などをしてもらいながら、グロースハックの基礎を教えてもらうということになった。

グロースハックってなんだろう?

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「そういうわけで、さっそくグロースハックの基礎について説明していくね。」

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「よろしくおねがいします!」

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「元気がよくていいですね。そもそもグロースハックというのがどういうことかわかりますか?」

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「わかりません!」

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「素直でいいですね。グロースハックというのは、簡単に言うとデータを見ながら色々と試行錯誤を繰り返してアプリのKPIを上げる、要するによいアプリにしていこうという試みのことです。『グロースハック』でGoogle検索してみると、」

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「あ、それは調べました!『グロースハックとは、 ユーザーから得た製品やサービスについてのデータを分析し、改善してマーケティングの課題を解決していく手法です。近年表出してきた概念で、 インターネットサービスの分野では、 グロースハックを専門に行う「グロースハッカー」の存在が重要だとされています。』って書いてありました。」

参考:https://ferret-plus.com/1053

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「そういうことです。実際にアプリを見てみながら話をするのが早いですね。たんたんは当然うちのアプリをインストールしていますよね?」

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「もちろんです!」

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「アプリを使ってみていて、ここがもう少し改善されたらいいのではないかっていうところ、ありませんでしたか?」

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「あります!!例えばヘルスケア情報の記事のページに出てくる記事の順番はもうちょっと工夫したほうがいいと思います!」

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「うんうん。でも、今そう思っているのはたんたんの感想だよね。実際に順番を変えて出してみたら、やっぱり今のほうがいいって思うかもしれないよね。」 

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「は、はい。。。でもそれは、やってみないとわからないと思います。」

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「そう、まさしくそのとおりなんだよ。それを実際にやってみて、ユーザーが実際に記事を読んでくれたかを見てどっちがよかったかを判断して、最適な状態を目指していくのがグロースハックっていう作業なんだ。」

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「記事の順番みたいに小さな部分もあれば、そもそもアプリの見た目を大きく変えてみたりするような大きな部分もあるし、文章を「ですます調」にするか「だである調」にするかみたいなもっと細かい話もあるね」

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「なるほど!!」

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「まず仮説を立てて、実際にやってみる。記事の閲覧率みたいな数値がどう変わったのかを見て、次にやることを決める。この作業を順番にPlan、Do、Check、Actionと言って、それぞれの頭文字を取ってPDCAサイクルと呼ぶんだ。」

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PDCAサイクル!なんか聞いたことあります!!」

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「ちょっと前から一般的になったビジネス用語だからね。今日はこのあたりにして、明日からは実際にそれをやっていきましょう。」

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(ビタミンCは一度にたくさん摂取しても体で使われない分はそのまま排出されてしまう。摂取のコツは、まとめてではなく、こまめにとること。こうやって少しずつ教えてくれるあたりも、ビタミンCそのものね。)

グロースハッカー初日の終了

 帰宅後、たんたんは自宅のベッドに寝転びながら異動に向けて怒涛のように過ぎた数日と、今日習った言葉について反芻したのだった。

 

 グロースハック、PDCAサイクル

 

 PDCAというのは、ダイエット指導と少し似ているかもしれない。お客さんとお話して、その反応と実際のお客さんの行動を見て、また別の言葉をかけて。

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「うん、やっぱり似てる。私、知らず知らずのうちにPDCAサイクルをしてたんだなー。」

 管理栄養士としてのこれまでの経験が活かせるかもしれないというのは、彼女にとっては前向きな事実であった。

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「だったら、きっとなんとかなるよね。」

 こうしてたんたんのグロースハッカーとしての生活がスタートした。

 

・・第2話に続く