もしグロ 〜もし管理栄養士の女性社員がヘルスケアアプリの「グロースハック」をしたら〜

これは管理栄養士からグロースハッカーに転身したとある女性社員の奮闘記である

第10話 たんたん、自分を知る

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大切な前置き

 このお話はフィクションです。実在の人物や団体、事件などとは一切関係ありません。

たんたん、初心に帰る

 様々な人たちとの出会いによって成長したたんたんは、今日も元気に業務に勤しんでいた。

 それにしてもグロースハックというのは、本当にいろいろな人々と出会う職業であるなあと、たんたんは思った。プランナーと話す、エンジニアとも話す。ときには尖りすぎた強敵(とも)と出会いながら、たんたんの知識は少しずつ確実に増えていっている。

 そんな中、たんたんは、グロースハックチームに異動してきたときの最初の疑問に立ち返ることになった。

 

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「そもそも、なんで私はここに異動することになったんだろう。」

 管理栄養士だったころの上司は、たんたんは是非と頼まれてこのチームに異動することになったのだと言っていた。しかし、何故そこまで自分が望まれたのかがわからない。

 たんたんはグロースハックに詳しいわけではない。エンジニアとやり取りしたような経験もなければ、プランナーと企画を議論した経験もない。実際にチームに参加してから失敗もしたし、周囲のメンバーに助けられてばかりである。

 そんな自分を、このチームはどうして求めたのだろう。

 その疑問やモヤモヤした気持ちを解消すべく、たんたんはグロースハックチームのリーダー、ゆっつーの元へと向かった。

たんたん、直談判する

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「何故私だったんですか!!!」

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「い、いきなりどうしたの。たんたん。」

 思ったよりも大きな声が出てしまったこともあり、部屋が少しざわついた。いけないいけない。てへぺろっ。

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「異動してきたときの、一番最初の疑問を思い出したんです。なんで私はこのチームに異動することになったんだろうって。気になって気になって食事も喉を通りません。」

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「さっきキッチンで、てくてくさんの料理を美味しそうに食べてたような。。。まあでも疑問はわかりました。
 そうですね。たんたんはグロースハックと聞いて最初にどういうものだと思いましたか?」

 異動したてのころの自分を思い出し、たんたんは答えた。

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「数字を細かく見たりとか、自分にはハードルが高そうだと思いました。でも、実際にやってみるとそんなことはなくて、新しい案を考えるのがだんだん楽しくなっていきました。」

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「良い答えです。」

たんたん、ドメイン知識というものを知る

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「たんたんのグロースハッカーとしての仕事はユーザーの入会時の会話でしたね。そのときにその時点での入会時の会話をみて、どう思いましたか?」

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「正直に言うならイマイチだと思いました。実際に食事指導をしていた立場からすると、質問の順番や言葉の選び方が変だなって。」

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「うんうん。ではここで質問です。何故そうなっていたんだと思いますか?」

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「それは、実際に食事指導をしたことがある人が、開発に関わらなかったからで、、、、あ!」

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「気づいたみたいですね。そう。それが僕がたんたんをこのチームに招いた理由です。」

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「私が、管理栄養士で、実際にダイエットを目指す人達と接したことがあるから。そういうちょっとした違和感に気づくことが出来るから。」

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「そのとおりです。グロースハックも分析も、ただデータや統計に詳しいだけではダメなんです。自分たちが扱うものに対しての知識、分析用語では『ドメイン知識』と言うんですが、この知識をあわせてはじめて良いグロースハックが生まれるんです。
 うちのチームはグロースハックという作業そのものの知識はありました。分析作業もエンジニアリングもそれぞれに長けているメンバーがいます。しかし、ヘルスケア分野そのものに対する知識を持っている人だけがいなかったんです。
 だから、たんたんはこのチームのマスターピースだったんですよ。事実として、たんたんがグロースハックに関わってくれるようになって、それまでよりも成果が出るようになりました。」

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「僕は、ただデータを扱うだけの専門の部署というのは時代遅れだと思っています。担当しているサービスの領域の知識をしっかりと持って、提供しているサービスに寄り添った分析や提案が出来ることこそがグロースハッカーに求められることだと思っているんです。」

たんたん、気づく

 たんたんは、最初は自分は誰か退職した社員の数合わせのようなものなのではないかと不安に思っていた。求められているというのも体のいい方便なのではないかと思っていたのだ。

 だから、自分の存在が本当に求められていたものだったということと、それに応えることができていたということが嬉しかった。

 たんたんは、すばやくお礼を言って自分の席に戻っていった。

 こうしてはいられない。悩んでいる時間など、悩む必要など、なかったのだ。自分が求められていることに、もっともっと応えたい。

 試したい案が山のようにある。自分ならではの知識を役に立てられる場所がある。自分に足りない知識を補ってくれる、素敵なチームがある。

 待ってられない未来がある。

 迷いのなくなった表情で仕事に取り組み始めたたんたんを、チームのみなは微笑みながら眺めた。

次回予告

 迷いを振り切ったたんたん。

 その前に立ちはだかる一人の男!

 次回、もしグロ。「たんたん、最新になる!」